スィート・パティシエール 〜 3つの甘いお菓子な話 〜

■運命の出会い■



 順番を待つ受講生でごった返すカウンター
 大声を張り上げる事務員の声はざわめきの中にかき消されてゆく
  
事務員「13番! 13番の方 入室許可証を取りにきてください」
  
 「13番はいないの〜?」
  
モル「!へ〜〜い」
  
事務員「呼ばれたらチャッチャと来てよっ!!忙しいんだからぁ!」
  
モル「はい はい」 けだるい返事をしながらカードを受け取るモルダー
  
事務員「ああ 君はこのカードを持って43番教室ね」
  
モル言われたとおり43番教室の前に来ると数人の生徒に取り囲まれる
  
生徒1「おい そのカード俺のと とっかえてくれないかな」
モル「なんで?」
生徒1「43番教室の教官ってスッゲエ美人なんだ」
生徒2「スッゲエ怖いけどな」
生徒3「超美形で超おっかないけど超サイコーっ!」
生徒4「8センチのハイヒールで顔に蹴り入れられた奴もいるぜ」
生徒5「手を出そうとしたからだろ?」
生徒6「手だけじゃねえよ へへへ」
生徒1「俺のこの25番教室の姉ちゃんもなかなか可愛いぜ!」
  
モル「悪いけど やっぱり可愛いのより美人の方が僕は好きなんだ じゃっ!」
 笑いながら43番教室をノックするモルダー
 返事が無いので仕方なくそっと開けてみる
 誰もいない。。。と思ったら眼鏡を掛けた美人がちょうどガーターベルトを直しているところだった
声を掛けそびれ その艶めかしく白く細い足を眺めていると
  
スカ「何見てるのっ!」
  
モル「ちゃんとノックしました!」思わず姿勢を正し 直立するモルダー
スカ「あっ そう」
 にべもなく答える教官は椅子の上にハイヒールの足を乗せ
 今度は左側のガーターを直し始めた
 ちょっとしゃがむとスカートの中が覗けそうなくらい深いスリットの入ったタイトを穿いていた
  
モルなんだよ〜〜美人でってのはあってるけどめちゃめちゃ嫌な女じゃ〜ん
 それにこいつ僕より若いぞ 幾つなんだよ
  
スカ「私は スカリー教官よ 今日一日あなたの指導にあたらせて頂くわ よろしくね」
モル「フォックス・モルダーです よろしくおねがいします!」
  
スカ「あっ そう モルダーね。。。。 まあ 席について。。。何か聞きたいことでも?」
 ねじれたスカートの脇に手をあてきゅっと直しながらモルダーの顔を覗き込んだ
  
モルその目を逸らすことなくモルダーが聞いた  「教官って幾つなんですか?」
スカ「教習とは関係ないことには答えないの! わかった?」
  
モルだいたいここは教習所だぞ 何でそんな短いスカート履いて来る必要が何処にあるんだよ
 ズボン履けよ ズボン!
  
スカ「私のスカートが短いって思ってるんでしょ?」
モル「。。。。。。」
スカ「何で黙ってるの? 答えられないのは図星だから?」
モル「これってもう授業に入ってるんですか?」
スカ「あなたがこのドアをノックした瞬間からね。。。」
モル「はぁ?」さっきは ノックが聞こえなかったように言ったくせに。。。
スカ「まず心理面のテストからね どんなことがあっても動揺しない心を持たなくちゃね
 若い女の子とすれ違うたびにドキドキしてたんじゃまともな運転はできないわよ」
  
モル若い女の子? まさか自分のことを言ってるんじゃないだろうね。。
 思わずモルダーが吹き出しそうになると
  
モル「うわぁっ!」 顔の前に教科書が飛んで来た 危うく避けると
  
スカ「あら 反射神経はなかなかいいわね 今まで当たらなかったのはあなたが初めてよ」
 腕を組み顔色一つ変えずに眼鏡をクッと押し上げてちらっとモルダーを見て言った
  
スカ「拾いなさい」
モル「自分が投げたんだろ?自分で拾えば?」教官だということも忘れて言い返すモルダー
  
スカ「あっそ! あなたの教材よ 要らないの?」
モル渋々拾い上げて スカリー教官に渡そうとすると
スカ「要らないわ まず 15ページを開いて いいって言うところまで 読んでちょうだい」
モル「こんなもの読むより実践してくださいよ 運転はいつやるんだよ〜」
スカ「するんですか?でしょ まず口のきき方から直さないとだめみたいね
 運転なんて一番最後よ 基本もできてないのにとんでもないわ!
 あなたの場合運転技術は必要ないんじゃないの?
 運転の仕方より精神面を叩き直すことが 必要みたいよ
 こういう講義って屈辱だとおもうでしょ それが違反をしたあなたの罰よ
 そう簡単に免許がもらえると思ってもらっちゃ困るわ
 免許取り消しだなんて…何をやらかしたの? 交通事故?スピード違反?飲酒運転?」
  
モル「いろいろあってね。。。」
スカ「それなのに また免許が欲しいのはなぜ?」
モル「ただ車が好きなんだ それだけ。。。。」
  
スカ「じゃ今度から 慎重に運転してよね 本当に好きならできるでしょ」
モル「まあね」
  
 夕方近くなるまで個人レッスンは続けられモルダーが車の運転を許されたのは
 西日が少し傾きかけた頃だった
  
スカ「それでは コースにでて軽く流してみましょうか? 運転については別に問題なさそうだし」
  
 二人が乗り込みスカリーがシートベルトを掛け終えるとモルダーがぼそりとつぶやいた
モル「密室だね。。。」
スカ「変なこと考えないで頂戴」
モル「変なことって?」
スカ「あなたが思っていることよ」
モル「へぇ〜 分かるんだ」
スカ「だいたいね 男が考えることって まったくバカみたいよ
 ほら!前見て!よそ見しないのっ!」





このあとへと続きます おたのしみに。。。。3通りの物語をどうぞ

 



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